GRAS(一般に安全とみなされる物質)制度の概要
米国において、食品に直接添加される成分、あるいは包装・容器等から食品へ移行する可能性のある物質(食品接触物質)は、原則としてFDAの食品添加物承認を得る必要があります。しかし、十分な科学的知見や安全データに基づき専門家の間で安全性が広く認識されている物質については「GRAS」として通知手続きを行うことで市場投入が可能となります。
対象範囲: 新規食品成分、酵素、香料、栄養添加剤に加え、食品包装用樹脂、フィルム、各種コーティング剤、接着剤などの食品接触材料(FCM)。
評価の要件: 単に毒性データがないというだけでなく、製造プロセスの再現性、物質の構造同定、純度、不純物プロファイル、および安全性を裏付ける高度な科学的データの提示が必要とされます。
米国輸出企業に求められる化学分析・適合性評価
米国市場へ食品資材、添加物、あるいは各種包装・容器材料を輸出・供給する日本企業は、最新のFDA基準に対応した客観的データの整備が求められます。
成分同定および純度・不純物分析: 物質の同定(CAS番号、化学構造)に加え、製造時に発生する微量不純物、残留溶媒、重金属などの精密定量データを取得する。
溶出試験および食品移行挙動の評価(FCM用途): 食品接触材料から食品モデル溶媒への物質の移行量(Migration Test)を測定し、想定される摂取レベルが安全基準内であることを実証する。
GRAS申請・自己評価用データの作成: FDAへのGRAS通知(GRN)手続きや自己決定GRAS(Self-Determined GRAS)評価に必要な化学的・物理的データの裏付けを事前に行う。
まとめ
米国市場における食品・包装資材のコンプライアンス管理では、安全性を客観的に証明する「科学的データ」の質が問われます。
特にGRAS適合の評価においては、主成分の分析にとどまらず、製造工程由来の意図しない不純物や微量成分の精密化学分析および溶出データの提供が不可欠となります。米国向けに食品原材料、添加物、パッケージ部材を出荷しているメーカーや商社は、自社製品の精密分析とFDA法規制への適合点検を早期に進めることが推奨されます。
