米国環境保護庁(EPA)は、有害物質規制法(TSCA)第6条に基づく優先評価化学物質の一環として、有機溶剤や化学中間体として使用される1,2-ジクロロプロパン(1,2-Dichloropropane / CASRN: 78-87-5)に関するドラフトリスク評価書(Draft Risk Assessment)を公表しました。
評価書では、対象となる1,2-ジクロロプロパンの製造・加工・工業的使用の多くの想定条件(Conditions of Use)において、作業者に対する発がん性および非発がん性の健康懸念から不合理なリスク(Unreasonable Risk)が存在すると判断されています。
リスク評価の概要と懸念事項
1,2-ジクロロプロパンは、他の化学物質の製造中間体や、洗浄・脱脂剤、接着剤、塗料などの成分として広く使われてきた有機塩素化合物です。
- 発がん性ハザード: 過去の職業ばく露事例や毒性試験に基づき、吸入ばく露による胆管がん等の発がんリスクが特定されています。
- 非発がん性ハザード: 作業環境における吸入および皮膚接触を通じ、中枢神経系、肝臓、腎臓への影響(非発がん毒性)が及ぶリスクが確認されています。
今後のプロセスと企業への影響
本案の公表に伴い、公募された意見や科学諮問委員会(SAB)によるピアレビューを経て最終的なリスク評価書が確定します。
評価が最終確定した場合、EPAはTSCA第6条に基づき、「特定の用途の禁止・制限」「製品中の残留濃度の制限」「作業場ばく露限界値(WEL)の遵守義務」といった強力なリスク削減措置(Risk Management Rule)を提案・施行する段取りとなります。
まとめ
米国TSCA第6条に基づくリスク評価は、最終確定後に製造禁止や著しい用途制限に直結するため、サプライチェーン全体に対する影響が非常に大きい手続きです。
特に1,2-ジクロロプロパンのような揮発性有機塩素化合物は、製品本体の成分としてだけでなく、製造工程で使用される洗浄溶剤由来の残留不純物として微量検出されるケースがあります。米国へ化学品、塗料、電子部品、各種部材等を供給している事業者は、自社製品における含有有無や不純物レベルの精密定量分析・スクリーニング調査を速やかに進めることが推奨されます。