厚生労働省は、労働安全衛生規則(安衛則)の一部を改正する省令案を公表し、パブリックコメントを実施しました。本改訂案は、事業者が譲渡・提供する化学物質のSDS(安全データシート)およびラベルへの記載義務項目を拡充するものです。
安衛法に基づく「化学物質の自律的管理」が全面的に推進される中、化学物質を取り扱う現場での暴露防止対策を実効的なものにするため、従来のSDS記載内容に加えて新たに4つの必須通知項目を追加することが提案されています。
新たに追加提案された「4つのSDS・ラベル通知事項」
現行の安衛則第34条の2の4等に対し、以下の4項目を通知事項として追加する改正が行われます。
- 成分の識別番号(CAS番号等の明記): 含有する対象成分について、CAS登録番号(CASRN)など、世界的に固有の化学物質として特定できる識別番号の記載が義務付けられます(番号が存在しない物質を除く)。
- 適切な呼吸用保護具の種類: 作業者の吸入ばく露を防ぐため、防毒マスクの吸収缶の種類(有機ガス用・酸性ガス用等)を含め、使用すべき適切な呼吸用保護具の具体的種類を明記します。
- 不適当な保護手袋の材質: 透過・膨潤等により不浸透性保護手袋の素材として「適さない(使用してはならない)」材質に関する情報を記載します。
- 含有成分の法令規制区分: 製品に含まれる各対象成分が、安衛法上のどの規制区分(リスク評価対象物、皮ふ等障害化学物質、特定化学物質障害予防規則などの特別規則対象物)に該当するかを明示します。
化学物質取り扱い企業に求められる準備
省令の採択・発効後は、日本国内で流通するすべての該当化学品(混合物・成形品材料含む)のSDSおよびラベル改訂が必要となります。
- 既存SDSの総点検: 自社製品のSDSに「CAS番号」が漏れなく記載されているか、成分の特定・同定が十分かを確認する。
- 保護具適合性・物理化学データの再確認: 手袋の耐薬品性(不適当な材質の特定)や吸収缶の選定に必要な、正確な物性・膨潤試験・定量データの整備を進める。
- 安衛法規制区分の再照合: 毎年更新されるリスク評価対象物質リストや皮ふ等障害化学物質の最新情報に基づき、成分ごとの法区分表示を更新する。
まとめ
日本国内における化学物質管理は、SDSの未提供や誤記載に対する法的ペナルティの強化とともに、提供される情報の質・具体性に対する要求が著しく高まっています。
特に今回の改訂提案にある「CAS番号の記載」や「保護具適合性の明確化」に対応するためには、混合物中の成分を正確に特定・定量する精密化学分析データと、最新の安衛法規制データベースに基づいたSDS作成・改訂体制が不可欠です。化学品メーカーや輸入・販売事業者は、改正施行を見据えて早めのSDS見直しと分析スクリーニングを進めることが強く推奨されます。