欧州各国では、食品接触材料および製品の規制が厳しく定められています。
食品接触材料や製品の場合は、使用可能な化学物質が限られています。
各国の最新動向を踏まえてご紹介致します。(2023年4月時点)

【フランス】

フランス政府は独自の規制として、2023年1月1日から包装材、商業用宣伝のためのダイレクトメールおよびカタログへの鉱物油使用を禁止する。
なお、禁止の対象である「鉱物油」を「インキ製造に使用される石油系炭化水素を原料とする油脂」と明示して以下と規定した。

1. 1~7個の芳香環を含む鉱物油芳香族炭化水素(MOAH)
2. 16~35個の炭素原子を含む鉱物油飽和炭化水素(MOSH)

 

2023年1月1日から、インキ中の質量濃度1%超のMOAHの使用を禁止する。
2025年1月1日からは、インキ中の質量濃度0.1%超のMOAHおよびMOSH、ならびに芳香環3~7個の化合物の質量濃度1ppm超のMOAHの使用を禁止する。

欧州食品安全機関(EFSA)によると、鉱物油の芳香族炭化水素に発ガン性があることが示されている。洗剤、各種潤滑油、溶剤、印刷用インク等に含まれている可能性がある。 その為、さまざまな経路を通じて食品に侵入し、人体の健康を害すると考えられている。

【イタリア】

イタリア政府は法令(DECRETO 25 novembre 2022, n. 208)にて、個人使用の食品又は物質と接触することを意図した包装、容器、器具へのステンレス鋼使用に関する内容を更新した。
今回の改訂はステンレス鋼のみを対象とし、[Part A]・[Part B]にそれぞれを追加した。
具体的な更新内容は以下の通りです。

[Part A]:食品と接触して使用できるステンレス鋼種のリストを規定しており、 以下の鋼種が追加された。

UNI AISI/ASTM UNS
1.4062 S32202

 

[Part B]:化学成分分析により特定されたPart Aの認定リストにないステンレス鋼で、 以下の組成要件を満たすことが要求される。

Tipo C
%
Si
%
Mn
%
P
%
S
%
N
%
Cr
%
Cu
%
Mo
%
Nb
%
Ni
%
Ti
%
Altri
elementi
%
B Ω 0.29-
0.38
Max
1.00
Max
1.00
Max
0.04
Max
0.015
0.13-
0.22
0.15-
16.5
- - - - - -

 

【ドイツ】

ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、食品接触材料に関する推奨基準を 2023年2月 1日に改訂した。
改訂物質は「シリコーン」「天然及び合成ゴムによる日用品」「天然及び合成ゴムによる食品接触日用品」「食品接触紙及び板紙」「調理用紙、高温フィルター紙及び紙の層」「ベーキング目的の紙及び板紙」。

【EU】

世界貿易機関(WTO)の通知文書によると、EU は附属書Iの物質認可の変更と新しい物質の追加に関するEU食品接触プラスチック規則(EU) No 10/2011 の第16回修正案を提出した。
今回の改定案は、「未処理の木粉、木繊維」の認可を削除する。
植物繊維の認可は「ひまわりの種殻」のみが残り、木粉や竹繊維などはプラスチック充填剤や添加剤として使用出来なくなる。
また、「サリチル酸 (CAS No 0000069-72-7)」も今回の改訂で認可削除となった。
一方で、以下の5物質が新規で追加となった。

物質(CAS No.) 物質名 制限事項と仕様
FCM No 1078
(CAS No 3319-31-1)
トリス(2-エチルヘキシル)ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸塩 軟質ポリ(塩化ビニル)を製造するための可塑剤としてのみ使用する。乳児向けの食品との接触には使用しない。
FCM No 1080
(CAS No 156157-97-0)
(トリエタノールアミン e-過塩素酸塩、ナトリウム塩) ダイマー 付属書 III の表 2 の参照番号 01.01.A の食品カテゴリに含まれる食品と接触する硬質ポリ (塩化ビニル) でのみ使用すること
FCM No 1081 飽和 C16/C18 脂肪酸で部分的にエステル化された N, N-ビス (2-ヒドロキシエチル) ステアリルアミン 附属書 III の表 2 で類似物質 E が指定されている乾燥食品の食品事業者による包装を意図したプラスチック材料および製品に最大 2% (w/w) でのみ使用すること。
FCM No 1082
(CAS No 52628-03-2)
リン酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレートとの混合エステル ポリメチルメタクリレートの製造には、最大 0.35% (w/w) まで使用する。
FCM No 1083
(CAS No 2421-28-5)
ベンゾフェノン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物 (「BTDA」) 食品と接触して使用するポリイミドの製造において、最大43% (w/w) までのコモノマーとしてのみ使用すること。