2025年3月16日に発効するEU規制2025/351は、食品接触プラスチック材料および製品に関する新たな規制の枠組みを定め、既存の規制を全面的に改訂します。これにより、食品と接触するプラスチック製品の製造に関する要求事項が厳格化されます。規制は、欧州連合(EU)加盟国に適用されるほか、EU市場に製品を販売する非EU国からの輸入製品にも影響を与えます。つまり、EU域外で製造された食品接触プラスチック製品がEU市場に流通する場合にもこの規制が適用されます。
規則の適用範囲
- EU加盟国: この規制はEU加盟国全てに適用され、EU市場内で販売されるすべての食品接触プラスチック製品が対象となります。
- 非EU国からの輸入製品: EU市場に流通する食品接触プラスチック製品が、EU外で製造される場合、製品がEU規制に適合していることが求められます。
主な改定内容
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定義の更新と「高純度」の要求
新規則では、以下の点について定義が更新されました:- プラスチック再生処理: 再生プラスチックを利用するための処理方法について、具体的な要求が記載されました。
- UVCB物質(未知または不確定な組成物質): 食品接触プラスチックに使用されることが許可されたUVCB物質に関する基準が追加されました。
- 高純度: プラスチック材料の「高純度」に関する具体的な要件が定義され、食品中に移行する物質の量や含まれている物質の純度基準が厳格に定められました。例えば、高純度の物質は、移行量が0.05 mg/kgを超えてはならないといった規制が設けられています。
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物質使用規定の見直し
食品接触プラスチック製品に使用される物質は、EUの承認リストに記載されている物質のみを使用しなければならなくなります。これにより、製造過程で使用されるポリマー製造助剤、着色剤、溶剤などが規制対象となり、これらがEUの承認を受けた物質であることが求められます。また、生物殺菌剤に関する規定も新たに設けられ、生物殺菌剤に使用される活性成分がプラスチック製品においても使用可能であることが確認されています。 -
再生プラスチックの使用条件
再生プラスチック製品の製造についても、新たに厳しい条件が設けられました。特に、再生プラスチックを使用する製品は、その品質が保証されなければならず、リサイクルプラスチックの使用についても再生プロセスの監視と評価が強化されています。さらに、再生プラスチック製品における高純度の基準が追加され、消費者に安全な製品が届けられることが強調されています。 -
マイグレーションテストとコンプライアンス検査の強化
食品接触プラスチック製品から食品に移行する物質の量を測定するマイグレーションテストの基準が見直されました。新しい基準では、テスト方法の最適化、テスト回数、テスト結果評価基準の明確化が行われ、より信頼性の高い検査が求められます。これにより、食品安全がさらに強化され、消費者のリスクを低減することができます。 -
製造業者への新たな義務
食品接触プラスチック製品の製造業者は、新しい規制に基づき、製品に関する使用説明書、適合性声明、および消費者への適切な情報提供を行う義務を負います。特に再利用される食品接触プラスチック製品については、その使用方法や劣化防止に関する情報を提供することが求められます。製品の消費者への影響を最小限に抑えるために、製造業者は製品の性能や安全性を確保し、十分な情報を消費者に提供しなければなりません。
移行措置
- 規制改訂に伴い、2026年9月16日までに市場に投入された旧規制に準拠したプラスチック製品は、在庫がなくなるまで販売が可能です。しかし、2025年12月16日以降に市場に投入される中間製品や最終製品は、新規制に適合する必要があります。これにより、業界は新たな基準に向けた準備を進め、適法性を確保することが求められます。
業界における対応の重要性
- この新規制は、プラスチック材料の純度やリサイクル品質を強化することを目的としています。企業は、原材料選定から製造工程に至るまで、規制に対応するための体制を整備し、製品の品質管理とコンプライアンスの向上に努める必要があります。また、適切なコンプライアンス文書(適合性声明など)の整備も重要となります。業界全体での規制遵守が求められ、消費者の安全を最優先に考えた製品づくりが必要です。
出典
- 規制2025/351(EU規則)
EUR-Lex 2025/351